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歯科医師は歯根吸収をどう見つけ、どう対処するのか
本日は、矯正治療の潜在的リスクである「歯根吸収」について、専門医の先生はどのように管理・対処されているのか、その舞台裏を伺います。先生、患者さんが最も不安に思うのは、歯根吸収が自分の知らないうちに進行してしまうことだと思います。どのように発見されるのでしょうか。はい、歯根吸収には自覚症状がほとんどないため、私たち専門家による定期的なモニタリングが不可欠です。まず、治療を開始する前の精密検査の段階で、パノラマレントゲンやデンタルレントゲンを撮影し、患者さん一人ひとりの歯根の形態や長さを詳細に評価します。ここで、もともと歯根吸収のリスクが高い方を把握しておくことが、最初の重要なステップです。そして、治療が始まった後は、定期的にレントゲン撮影を行い、歯根の状態を経時的にチェックします。一般的には、治療開始から半年~一年後に一度撮影し、その後も必要に応じて撮影を追加していきます。これにより、万が一歯根吸収が進行していても、早期に発見することが可能です。もし、治療中に歯根吸収が見つかった場合は、どのように対処されるのですか。まず、歯根吸収の程度を評価します。レントゲン上で確認できる程度の軽微な吸収であれば、特に治療計画を変更せず、経過観察を続けることがほとんどです。しかし、明らかに進行が見られる場合や、中等度以上の吸収が認められた場合は、積極的な介入を行います。最も一般的な対処法は、矯正力を弱めるか、あるいは一時的に力をかけるのをやめて、歯を休ませる期間(レストピリオド)を設けることです。これにより、歯根表面の修復機能が働き、吸収の進行を食い止め、セメント質が再生するのを促します。期間は1~3ヶ月程度が目安です。その後、レントゲンで状態が安定していることを確認してから、より弱い力で治療を再開します。極めて稀ですが、重度の吸収が認められ、これ以上力をかけると歯の寿命に影響すると判断される場合は、患者様と十分に話し合った上で、当初の治療ゴールを修正し、ある程度のところで妥協して治療を終了するという選択をすることもあります。私たちの最優先事項は、歯の長期的な健康を守ること。そのために、常に細心の注意を払ってモニタリングと管理を行っています。