幼い頃から、私のあだ名は「ぽかんちゃん」でした。いつも口が半開きで、自分でも気づかないうちに口で息をしていたからです。親からは「みっともないから口を閉じなさい」と何度も言われましたが、鼻が詰まっていることが多く、なかなか治りませんでした。中学生になる頃には、自分の横顔が好きになれませんでした。少し出た前歯と、引っ込んだように見える顎。いわゆるアデノイド顔貌という言葉を知ったのは、もっと後のことです。鏡を見るたびにため息が出る日々。何とかしたいという思いはありましたが、どうすれば良いのか分からず、時間だけが過ぎていきました。転機が訪れたのは、社会人になってからです。ある日、同僚から「もしかしていびきかいてる?夜、息苦しそうだよ」と言われたのです。自分では気づいていませんでしたが、長年の口呼吸は睡眠の質にも影響していたのかもしれません。これを機に、本気で自分の体と向き合おうと決意しました。まずは耳鼻咽喉科へ。そこで初めて「アデノイド肥大」という診断を受けました。子供の頃に大きくなることが多いけれど、大人になっても残っているケースがあるとのこと。先生からは、手術も選択肢の一つだが、まずは鼻の通りを良くする薬と、鼻呼吸を意識するトレーニングから始めましょう、と言われました。並行して、矯正歯科にも相談に行きました。やはり私の歯並びは、長年の口呼吸が影響している典型的なパターンで、上顎前突と開咬が見られるとのこと。矯正治療には抜歯が必要で、期間も2年以上かかると言われ、正直迷いました。でも、ここで諦めたら一生後悔すると思い、治療を開始することに。耳鼻科での治療と、矯正歯科での治療、そして何よりも地道な鼻呼吸トレーニング。毎日は本当に大変でした。矯正装置の痛み、食事の不便さ、そして何よりも「本当に良くなるのだろうか」という不安。でも、少しずつですが、鼻で息をするのが楽になっていくのを感じ、鏡の中の自分の口元が、以前より引き締まってきたように見えた時、頑張ろうという気持ちが湧いてきました。治療が終わった今、口を閉じて鼻で呼吸することが当たり前になり、横顔にも少し自信が持てるようになりました。あの時の決断は間違っていなかったと、心から思います。