アデノイド治療と歯列矯正の連携

お子様のぽかんとした口元、いびき、いつも鼻が詰まっているような様子、そしてそれに伴う特徴的な顔つきや歯並びの乱れ。これらは「アデノイド顔貌」と呼ばれる状態のサインかもしれません。アデノイドとは鼻の奥にあるリンパ組織で、これが肥大すると鼻呼吸が妨げられ、口呼吸が常態化します。この口呼吸が長期にわたると、顎の成長や歯並びに悪影響を及ぼし、出っ歯や開咬といった問題を引き起こすのです。このような場合、歯列矯正治療を検討される方は多いと思いますが、アデノイド肥大が根本的な原因であるならば、矯正歯科治療単独では十分な効果が得られない、あるいは治療後に後戻りしてしまう可能性があります。そのため、耳鼻咽喉科医と矯正歯科医の緊密な連携が不可欠となります。まず、耳鼻咽喉科でアデノイドの肥大の程度や鼻腔の状態を正確に診断してもらうことが重要です。アデノイドの治療法には、薬物療法などの保存的治療や、場合によってはアデノイド切除手術があります。手術が必要と判断された場合、多くのケースではアデノイドの治療を優先し、鼻呼吸が確立された後に歯列矯正を開始することが推奨されます。鼻呼吸ができるようになると、舌が正しい位置(上顎の口蓋部分)に収まりやすくなり、上顎の適切な成長を促すことができます。これにより、歯列矯正治療の効果も高まり、治療後の安定性も向上するのです。矯正歯科医は、耳鼻咽 thờ科医からの情報をもとに、アデノイド顔貌の特徴である狭窄した歯列弓、上顎前突、開咬などの改善を目指した治療計画を立案します。成長期のお子様であれば、顎の成長をコントロールする装置(例えば、上顎急速拡大装置など)を使用することもあります。また、口呼吸の癖が残っている場合には、MFT(口腔筋機能療法)と呼ばれる舌や口唇のトレーニングを行い、正しい呼吸法や嚥下法を習得することも重要です。アデノイド顔貌の治療は、単に歯並びを整えるだけでなく、呼吸という生命維持に不可欠な機能を改善し、お子様の健やかな成長をサポートするものです。そのため、保護者の方は、両方の専門医とよく相談し、包括的な視点から治療を進めていくことをお勧めします。