審美歯科に行く前に知ってほしい、審美歯科に関する5つの知識

2025年8月
  • 歯列矯正で起こる歯根吸収とは?そのメカニズムを優しく解説

    医療

    歯列矯正治療を検討する際、多くの人が耳にする専門用語の一つに「歯根吸収」があります。これは、歯の根っこ(歯根)が文字通り溶けて短くなってしまう現象のことで、歯列矯正における潜在的な副作用として知られています。この言葉を聞くと、不安に感じるかもしれませんが、まずはそのメカニズムを正しく理解することが大切です。歯が動くという現象は、実は歯の周りの骨が溶けたり作られたりするリモデリングの結果です。矯正装置によって歯に持続的な力が加わると、歯が動いていく方向の骨を溶かす「破骨細胞」が活発に働きます。同時に、歯が動いた後のスペースには、新しい骨を作る「骨芽細胞」が現れます。この骨の代謝を利用して、歯は少しずつ移動していきます。この時、歯根の表面でも同じような細胞の働きが起こります。通常、歯根の表面はセメント質という硬い組織で守られており、簡単には溶けません。しかし、矯正治療のように持続的な力が加わると、歯根の表面でもわずかな吸収と修復が繰り返されます。ほとんどの場合、この吸収は生理的な範囲内であり、修復機能が働くため、歯の健康に影響を及ぼすことはありません。レントゲンで確認してもわからない程度の、ごく軽微なものです。しかし、特定の条件下では、この吸収が修復のスピードを上回り、目に見えて歯根が短くなってしまうことがあります。これが問題となる「病的歯根吸収」です。つまり、歯根吸収は歯列矯正のメカニズムと表裏一体の現象であり、誰にでも起こりうる生理的な反応の側面と、注意すべき副作用としての側面の両方を持っているのです。過度に恐れる必要はありませんが、このような現象が起こる可能性があることを理解しておくことは、安心して治療を進める上で非常に重要と言えるでしょう。