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矯正生活スタート!装置装着の痛みと乗り越え方
ついにこの日がやってきた。歯列矯正の装置(ブラケット)を装着する日だ。鏡の前で「この歯並びとも今日でお別れか」なんて感傷に浸る間もなく、私は診察台の上にいた。まず行われたのは、歯の表面のクリーニング。次に、一本一本の歯に青い薬剤を塗り、水で洗い流し、接着剤を塗布。そして、歯科医師がピンセットで小さなブラケットを正確な位置に貼り付けていく。最後に、光を当てて接着剤を固め、ワイヤーを通してゴムで固定したら、あっという間に私の口の中はキラキラの装置で満たされていた。装着自体に痛みは全くない。しかし、本当の試練はその数時間後から始まった。ジーン…という鈍い痛みが、全ての歯から響いてくる。これが噂に聞く「矯正痛」か。歯が動こうとしている証拠だとは分かっていても、とにかく痛い。食事の時間になっても、パンを噛み切ることすらできない。その日の夕食は、具なしの茶碗蒸しとヨーグルト。まるで病人のようだと、少し惨めな気持ちになった。痛み止めを飲んでなんとか眠りについたが、翌朝も痛みは続いた。さらに、ブラケットが頬の内側に当たって、早くも口内炎の兆候が。これはまずいと思い、クリニックでもらった矯正用のワックスを丸めて、ブラケットの上に貼り付けた。このネバネバした塊が、私の口内を守る救世主となった。痛みと食事の苦労は三日ほど続いただろうか。四日目の朝、ふと気づくと、あの激しい痛みが嘘のように和らいでいた。恐る恐るトーストをかじってみると、まだ違和感はあるものの、なんとか食べられる。人間ってすごい、慣れるんだ。この小さな成功体験が、私に大きな自信を与えてくれた。矯正生活はまだ始まったばかり。これから毎月の調整日には、またこの痛みがやってくるのだろう。でも、もう大丈夫。痛みは数日で消えること、ワックスという味方がいること、そして何より、この痛みの先に理想の笑顔が待っていることを、私はもう知っているから。