歯列矯正における歯根吸収は誰にでも起こりうる現象ですが、その発生しやすさや重症度には個人差があります。どのような人が歯根吸収のリスクが高いのか、その要因(リスクファクター)は、患者さん側の要因と治療側の要因に大別されます。ご自身に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。まず、患者さん側の要因として最も影響が大きいのが「歯根の形態」です。生まれつき歯根が細い、短い、あるいは先端が尖っているといった形態的な特徴を持つ人は、標準的な形態の人に比べて歯根吸収が起こりやすいとされています。これは、治療前のレントゲン写真である程度把握することができます。また、「過去の歯の外傷歴」もリスク因子です。過去に歯を強くぶつけたことがある場合、その歯は歯根吸収を起こしやすい状態になっている可能性があります。その他、アレルギー体質や特定の全身疾患、ホルモンバランスなども関与しているという報告もあります。次に、治療側の要因です。これは、どのような矯正治療を行うかによって変わってきます。「強すぎる矯正力」は、歯根吸収の最大のリスク因子の一つです。歯を早く動かしたいからといって過度な力をかけると、歯根へのダメージが大きくなります。「長すぎる治療期間」も同様です。力がかかっている期間が長ければ長いほど、歯根吸収の量は増える傾向にあります。また、「歯の移動様式」も重要です。歯を平行に動かすよりも、歯を傾けたり、歯を骨の中に押し込んだり(圧下)、歯根を大きく動かしたりするような複雑な移動は、歯根の先端に力が集中しやすく、吸収のリスクを高めます。特に、抜歯を伴う矯正治療で前歯を大きく後方へ移動させるケースなどは、歯根吸収が起こりやすい代表的な治療と言えるでしょう。これらのリスクファクターに複数当てはまるからといって、必ずしも重度の歯根吸収が起こるわけではありません。大切なのは、これらのリスクを治療開始前に歯科医師と共有し、より慎重なモニタリングのもとで治療を進めてもらうことです。
あなたは大丈夫?歯根吸収のリスクファクターを自己チェック