アンカースクリュー矯正とは?基本を解説
歯列矯正の世界で近年注目を集めている技術の一つに、「アンカースクリュー矯正」があります。これは、従来の矯正治療では難しかった歯の移動を可能にしたり、治療期間を短縮したりする効果が期待できる画期的な方法です。アンカースクリューとは、チタンなどの生体親和性の高い金属で作られた非常に小さなネジ(スクリュー)のことを指します。この小さなネジを、歯を動かすための固定源(アンカー)として、歯ぐきの骨(歯槽骨)に埋め込みます。従来の矯正治療では、奥歯などを固定源として前歯を動かすことが一般的でしたが、その際、固定源とした歯も多少なりとも動いてしまう(反作用)という問題がありました。しかし、アンカースクリューは骨にしっかりと固定されるため、動かしたくない歯を確実に固定し、動かしたい歯だけを効率的に、かつ精密に移動させることが可能になります。これにより、例えば、前歯を大きく後ろに下げたい場合や、特定の歯だけを圧下(歯ぐき方向に沈める)させたい場合など、従来の方法では困難だったり、ヘッドギアのような大きな顎外固定装置が必要だったりした症例でも、よりシンプルかつ効果的な治療が行えるようになりました。アンカースクリューの埋入は、局所麻酔下で行われる簡単な処置で、痛みも少なく、所要時間も数分から十数分程度です。矯正治療が終了すれば、スクリューは取り外され、傷跡もほとんど残りません。この技術の登場により、歯列矯正の適応範囲が広がり、より質の高い治療結果を目指せるようになったと言えるでしょう。