歯列矯正で抜歯を選択した場合、治療の中盤で最も大きなテーマとなるのが「抜歯スペースの閉鎖」と「正しい噛み合わせの確立」です。レベリングによって歯のガタつきがある程度解消されると、いよいよ抜歯によって作られたスペースを利用して、歯を大きく動かしていく段階に入ります。このステップでは、主に二つの重要な装置が活躍します。一つは「パワーチェーン」です。これは、鎖状につながった矯正用のゴムで、複数の歯を連結して、抜歯スペースに向かって引っ張るために用いられます。パワーチェーンを装着すると、歯全体がグッと締め付けられるような強い力がかかり、ここから本格的に隙間を閉じる作業が始まります。もう一つが、患者さん自身の協力が不可欠な「顎間ゴム(エラスティックゴム)」です。これは、上下の顎にまたがってかけるゴムのことで、歯列全体を後方に動かしたり、上下の歯の噛み合わせのズレを修正したりするのに絶大な効果を発揮します。抜歯スペースを閉じる過程では、多くの場合、まず犬歯を後方に動かし、その後、前歯全体を後方に移動させていきます。歯が動くスピードは月に約0.5mm〜1mm程度。抜歯スペースが約7〜8mmだとすると、完全に閉じるまでには一年から一年半ほどの期間がかかるのが一般的です。この期間は、目に見えて隙間が狭くなっていくのが分かるため、治療の進捗を実感しやすい時期でもあります。しかし、同時にゴムかけの煩わしさや、見た目の問題で精神的に辛くなることもあるかもしれません。この中盤戦は、まさに治療の山場。ここを乗り越えれば、理想の口元はもうすぐそこです。歯科医師の指示通りにゴムかけを頑張ることが、治療期間を短縮し、最良の結果を得るための鍵となります。地道な努力の先に、機能的で美しい噛み合わせが待っているのです。
抜歯の隙間はいつ埋まる?噛み合わせを作る治療中盤戦