歯列矯正と言えば、歯にブラケットとワイヤーを装着する方法が長らく主流でしたが、近年、それとは全くアプローチの異なる「マウスピース矯正」が、新たな選択肢として急速に普及しています。どちらの方法にも優れた点があり、どちらが自分にとって最適かを見極めることが、後悔のない治療への第一歩となります。ブラケットを用いたワイヤー矯正の最大の強みは、その歴史と実績に裏打ちされた「対応力」の高さです。歯を三次元的に、非常に精密に動かすことができるため、抜歯が必要な複雑な症例や、骨格的な問題が絡む難症例まで、ほぼ全ての不正咬合に対応することが可能です。歯科医師が直接、毎月ワイヤーの力を調整するため、治療計画の微調整がしやすく、確実な結果が得やすいという信頼感もあります。いわば、矯正治療の王道であり、最もパワフルな治療法と言えるでしょう。一方、マウスピース矯正は、透明な樹脂製の装置(アライナー)を、患者さん自身が定期的に交換していくことで歯を動かします。最大のメリットは、何と言ってもその「審美性」です。装置は薄く透明なため、装着していてもほとんど気づかれません。また、食事や歯磨きの際には自分で取り外すことができるため、ブラケット矯正のような食事の制限や、清掃の煩わしさがないのも大きな魅力です。しかし、その手軽さと引き換えに、いくつかの制約もあります。歯の移動様式に限界があり、非常に複雑な症例には対応できない場合があります。そして、最も重要なのが、1日20時間以上という装着時間を守る、患者さん自身の強い自己管理能力が治療の成否を大きく左右するという点です。ブラケット矯正は、確実性と対応力を求める方に。マウスピース矯正は、審美性と快適さを最優先し、自己管理に自信がある方に。それぞれの特性を正しく理解し、ご自身の歯並びの状態やライフスタイル、そして何を最も大切にしたいかという価値観に基づいて、専門家である歯科医師と相談しながら、最適な道を選んでいくことが大切です。
ブラケットだけじゃないもう一つの選択肢